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「じゃあ征夜は私たちとは別の川から来たのね?でも川から川へと渡る方法は無いんじゃない?」
「普通はな。でもたまに例外が起こる。近くを二つの川が流れていて、水が増水したら一つになるだろ?そんな風に、何かが原因で別の川に流れ着くことがあるんだ。まぁ、こんなの俺のいた世界でも立証出来てないけどな」
「でも貴方はここにいる。それは事実でしょう?」
「まあな」
孫策の屈託のない笑顔を見ながら、静かに頷く。
「ねぇ。征夜はこれからどうするの?」
「さぁなー。俺はこの世界のこと知らないし、行く所無いってのが正直なところかな?」
「ならここに居なさいよ。貴方の話面白いし」
「良いのか?俺みたいに怪しい奴を」
「今追い出すようなら、最初から連れて来て無いわよ。未来を知ってるってことは、後から役に立ちそうだし」
「あぁ、そういうこと。それなら好意に甘えさせて貰おうかな?」
「じゃあそうと決まれば、早速皆に貴方のこと紹介しないとね」
「うわ、ちょっ、引っ張んな!ちゃんと歩くから!」
孫策に強引に手を引かれながら部屋を出る。しかし、それ以降も一向に手を離すことなく、征夜の手を引いて歩いていく。
「孫策、さん?どこまで行くんだ?」
危うく呼び捨てにしてしまいそうになったのを、ギリギリで食い止めながら聞く。
「呼び捨てで良いわよ。同年代の人に敬称付けられると、なんかむず痒いから」
後ろを見ずにそう言うが、肝心なところは全く答えてくれなかった。
諦めてついて行くと、何だか大きな広間に連れて来られた。
中には八人の人がいて、先程孫策と馬に乗っていた、韓当と凌操の二人もその場にいた。
「おお、目が覚めたか。全く、馬の後ろに乗るだけも出来ないとは、とんだ軟弱者だな」
凌操が征夜の顔を見るなり、呆れた表情でそう口にする。
「皆さん。この者が、先程申していた黒川征夜という者です」
「韓当の言う通り、見るからに怪しいな。大丈夫なのか?」
凌操の隣にいる長身の男が訝しげな目を無遠慮に向けて来る。
「そう?私は結構好感持ってるけど?ちょっと格好良いし」
その隣にいた、ちょっと露出の多い女性は、征夜に笑顔を向けてくれる。
「程普は誰にでもそう言う奴だ。あまりあやつの言うことを鵜呑みにするなよ」
そう忠告してきたのは、長い髪を一つに縛り、右肩から前に流している女性だ。
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