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「おーい、マリ姫ー」
遠くの方から明るく気のいい女声が聞こえてきた。この声は。
「ナツキ」
ナツキが走ってくる傍らに、着物の裾を揺らしながら一歩一歩を大きく跳ぶように走ってくるハンの姿もある。
「マリ姫、大丈夫だった?」
「ええ、私は。それよりこの人が」
側に同じ村人がいるというのに、二人そろった姫たちを見て村人はまた怯えを露呈した。恐怖に満ちた顔で、ただただ二人を凝視することしか頭にない。
「シンタさん……」
ナツキが見かねて視界に入ってやる。かがむと、シンタはナツキにやっと気がついた。
「ナツキった、助けてくれ。こいつら早く追っ払ってくれっ」
「シンタさん、落ち着いて。姫たちは何もしないよ」
「何も? 何言ってるっ、もうされたんだ。早く医者に診せないと大変なことになるんだよぉ」
この反応、分かっていることとはいえ、マリは少し俯く。
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