第2話 嫌われ姫たち

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「あとは一人で行ってください。私、用事を思い出したので失礼します」 「え、ちょっとナツキちゃんっ」 「心配しなくても、この先を真っ直ぐ行けば村はすぐですよ」 「そうじゃなくて!また魔物が襲ってきたらどうするんだっ」 「それこそ、魔物を操れる姫たちに頼んだらいいじゃないですか。さっきみたいにきっと助けてくれますよ」  実際、助けてくれるのだから見殺しにすることにはならない。ナツキはただ、分かってもらいたいのと、ちょっと頭にきたのとで、姫たちのありがたみを思い知らせたくなったのだ。  まだ助けを求めるシンタを無視して、ナツキは横道に逸れていった。 「あのような態度をとって大丈夫なのですか?」  シンタと離れたのでマリが姿を現した。シンタはハンに任せたようだ。 「ごめんね、またマリ姫たちの印象台無しに……しちゃったかも」 「違います。私が訊いているのは、ナツキのことです」  歩みを止めて後ろに返ると、マリはその容姿さながらの気配を漂わせて、真剣にナツキを正視していた。ナツキの意表をつかれた顔を見て、マリはさらに真剣味を帯びる。 「あなたは大丈夫なのですか? 私たちを庇ってしまったら、あなたは村人に嫌な目で見られてしまうのではありませんか?」 「あー……」  今やっと気づいたとでもいうように、ナツキは視線を上向けて考える。 「たぶん平気。だって仮にも私、村長の娘だもん。追い出すなんてできないはずだから」 「本当に大丈夫ですか?」 「大丈夫、大丈夫。もう、マリ姫は心配性だなぁ」 「これくらいが丁度いいんです。ハンがああですから、つり合いが取れているでしょう?」 「あ、本当だね」 「それから、私もハンと同じくマリと呼んでくださいね、ナツキ」  肩をすくめて、ナツキは返事をしながら舌を出した。その時ふと脳裏に過った父との会話。今度は本気で勘当するぞ、とそう睨んできた父親を、ナツキは初めて見た気がする。本当に怖い顔をしていた。  だから少し不安なのだが、たぶん、実の娘を追い出すことはしないだろう。  ナツキはそう自分に言い聞かせて不安を取り除くのに努めた。
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