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* * * *
夜になると魔物の出現は多くなる。姫たちが守ってくれるが、さすがに視界も悪くなるので危険だ。だからナツキは、日が暮れる前に山を下り始める。
今日はナツキが山に入ったことがばれているだろう。シンタが知らせていたら、だ。そしてその確率は高い。父ハルキの額に青筋が浮かんでいる姿を、ナツキは容易に想像できた。
「昨日の今日だもんね。見逃してくれるわけないか」
観念して村に帰った。父が部屋の前で仁王立ちしているのを覚悟で。
しかしナツキの部屋にハルキの姿はなかった。
「おっかしいなぁ」
恐怖に戦いていたシンタが村で手当を受けながら騒いだとしたら、村中にナツキが森にいたことが知れ渡っていてもおかしくないはずなのに。
疑問に思いながらも得した気分でいると、ハルキの笑い声が聞こえてきた。今日は何やら上機嫌らしい。
耳を澄ますと、居間から賑わいの騒々しさが聞こえてくる。
ナツキはきしむ板張りの廊下をそっと進み、居間に向かった。
「いやいや、本当に助かりました。うちの用心棒では歯が立たないところだったのですよ」
戸をそっと開けて中の様子を窺う。
村の主だった顔が並んでいた。中央に父と知らない男。女たちは持て成しに忙しい。
(何かあったのかな?)
宴ということは、たぶん中にいる見知らぬ男の歓迎会だろう。よそ者を嫌う父にしては珍しい。
ナツキはもっとよく見ようと顔を近づけた。
時。
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