5人が本棚に入れています
本棚に追加
男は眉を潜める。
「姫たちは敵じゃない。村を救ってくれてるの!あなたが救ってくれたのと同じなの!お父さんが勝手に敵視してるだけよ!」
「……どういうことですか?」
男はナツキの言も考慮に入れてくれいているようで、ハルキに怪訝(けげん)な表情を向けた。
そんな顔を向けられても、ハルキに動揺はなく、呆れたように息をつく。
「こいつはあの山に住む奴らに毒されて言っているだけです。気になさる必要はありません」
「違う! 恩人さん、姫たちはいい子たちなの。お父さんは得体の知れないものが嫌いだから追い出したいだけなの。信じて!」
「部屋に戻りなさいナツキ」
「いやっ」
「戻りなさい」
ハルキは無理矢理ナツキを立たせると、村人に命じて宴会の間から退出させた。
ナツキの悲痛に訴える声がまだ聞こえている。
「いや、本当にじゃじゃ馬でして。お恥ずかしいところをお見せしました」
「……」
ハルキは誰にも聞こえないように舌打ちした。猜疑心を持たれてしまったのは言うまでもなかったからだ。
「みんな、今日はお開きだ」
嫌な雰囲気が流れ始めたと思った矢先の素早い行動。
居間にはハルキと男だけが残された。
最初のコメントを投稿しよう!