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「ソウさんはね、真実を確かめに来たんだよ。これで村から疑いが晴れるかもしれないの。だから、ソウさんには真実を話して」
なんだかよく分からないが、二人はぎこちなく頷いた。
「この鞠と般若の面は、初めから君たちの所有物なのか?」
早速ソウは質問した。質問の意図がよく分からなかった二人は顔を見合わせると、首を振った。嬉しさを露骨に出すわけにはいかないので、ソウの前では平静さを装う。
「いいや、違う」
「ナツキの手前、正直に申しますね。これは私たちの命です。私たちは人間ではありません。この鞠と面から創られた化身なのです」
ソウは未知のものに遭遇して、驚き半分、探究心半分を顔に上らせる。
「すごい術者もいたものだな。創った、か。その者の名前は?」
また主旨が少しずれている気もしたが、ハンが答えた。
「リュウキ。この山に暮らしてた人間だ。六年前に死んだがな」
なるほどとでも言いたそうにソウが頷く。何に納得したのかよく分からない。
「魔物を払うように創られたのか? リュウキは自分亡き後も村を守ろうとして?」
「そうですね、それもあります。でも私たちが創られた本当の目的はそれだけではありません」
「というと?」
「リュウキの息子で、今、行方不明のショウキって奴がいるんだけどさ、そいつを独りにしないように俺たちは創られたんだ。そしてそのショウキを今も捜してる」
ソウは今度こそ驚ききった顔で、この小さい少女たちを見つめ返した。
「ショウキを?」
信じられないという動揺ぶりは、ナツキが「ショウキ!」と叫んだ時に出ていたそれと同様のものだった。
「六年間捜していた? 二人で?」
「いえ、三人で」
マリの目線の先にはナツキ。
六年間も一人の人間を諦めず探し続ける三人に、ソウは信じられない、頭おかしいんじゃないか、というような引きつった奇妙な笑い方をした。
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