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「ショウ、キ?」
なんの確証もなく、ソウに対してその名が出てきた。ソウは頷く。
「思い出して、くれたんだな」
つう――と自然に、ナツキの頬を一筋の涙が伝う。
「ショウキ。ショウキだ。ショウキ……!」
彼を認識してしまったら、六年間の悲しみを洗い流すまで止まらないくらい、涙腺から涙が滞ることなく溢れ出てくる。
「気づ、かなかった。全然気づかなかったよぉ。だって、ショウキ変わっちゃってるんだもん。六年前は私より背が低かったのに、声も高かったのに、女の子みたいだったのに」
「変わりもするさ」
大きな身体。背中に当てられた手の大きさと力強さ。男だと意識せずにはいられない。
そう思うと、抱きしめられていることに恥ずかしさを覚えて、ナツキは咄嗟にショウキから放れた。
ショウキの顔。男らしくなったが、面影は消えていなかった。瞳の色も昔と変わらず綺麗な色をしているのに気づかなかったのは、他が変わりすぎていたからだろうか。
なんだか顔が熱くなった。
「な、何で黙ってたの? 初めに会った時言ってくれればよかったのに」
「もう俺の事なんか忘れていると思っていたから。覚えていてくれて、嬉しかった」
ナツキは抱きしめる代わりにショウキの両手を握った。
「忘れるわけ、ないじゃない」
ショウキは嬉しさの衝動に耐えられなかったようで、またナツキを抱きしめた。
「ちょ、ちょっとショウキっ」
ショウキは心底嬉しそうに笑っている。
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