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ナツキは初め冗談だと思った。けれど、ショウキは当然のような顔をして、逆に当惑する三人を訝(いぶか)っていた。
「どうしたんだ? 俺はそのために戻ってきたんだ」
どう見ても冗談で言っているのではない。三人は驚きを隠せず、沈黙するばかり。
ショウキはその判断に至った理由を語り出した。
「この村の奴らは相変わらずだった。相変わらず得体の知れないものを疎外していた。マリとハンのこともそうだ。村を救ったソウに対してだって、ハルキは捨て駒としか見ていなかった」
ショウキは込み上げる怒りを抑えるように俯くと、今度は低い声を地面に落とした。
「あいつ等は俺を見殺しにした。人を人とも思わない連中だ。六年経っても変わらない。救いようのない、愚かな害虫だ」
憎悪に満ちた正義感さえ見え隠れする強い意志。自分の言っていることに疑問など何もない。現在の村を見て確信を得たからか、迷いさえ微塵もない。
ナツキにはまだショウキの言動が信じられなかった。震える手で彼の外套を握る。
「うそ、だよね? 本気じゃないでしょ?」
「本気だよ」
嘘だと言ってくれるんじゃないか、そんな小さな希望も脆く突き放され、ナツキは絶望を感じて今度は強くすがりつくようにショウキの外套を掴んだ。
「うそ! ショウキ、そんなこと言う人じゃなかった。少なくとも六年前のショウキはそんなこと……」
「思ってたよ。それにナツキ、俺の外見が変わったように、心だって変わるものなんだよ。俺は裁ける心になったと思っている。その証拠に、ほら」
ショウキの右手が二月の冷気にかざされると、今まで気体だったものが一瞬にして固体へと昇華した。鋭い刀のような形の氷。ショウキが言うように、それは裁く鋭い意志を表しているかのようだ。
リュウキに不思議なことが為せたように、息子もまた、特殊な能力を秘めていた。
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