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「終わったぞナツキ」
それは凍てついた空気がなくなったので分かった。
「お見事でした」
「他に言うことは?」
「ありがとうございました、姫」
「姫じゃねぇって言ってんだろ!」
「えっとハン姫」
ハンが面をまた顔に持ってきた。
「ご、ごめん、ごめんなさい、冗談ですハン」
「よし」
たまに本気で恐怖の瞬間を垣間見る。ハンの冗談だと分かってはいるが、怖い。
「んで? 他に言うことは?」
「?」
ナツキは首を傾げる。どうやら質問の答えが合っていなかったらしい。
ハンは呆れがちに半眼になった。
「山に入る時、なんで俺たち呼ばなかった?」
「あー。えっと、考え事してたら忘れちゃって……」
脳天から思わぬ衝撃が降ってきた。
「いったぁ! 何するのよぉ」
軽い身のこなしで飛び上がってナツキの頭に拳を叩き込んだハンを、半泣きになりなが非難するナツキ。
「死にたいのか? ここ二、三日魔物が増えてんだ。しっかりしろよ」
「……はい」
これでは父に危険だと言われるのも無理はない。もっとも、ハルキは姫が直接危害を加えるかもしれないと思っているが。
「今日は素直だな」
それだけ言うとハンはスタスタ歩き始めた。
「あ、待ってよハン」
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