境界線の歪み

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「――ヤッタわ~!!!」 甲高い大声で叫ぶ高橋先輩の声と、 スコーーーンッと、缶が蹴られる音が周囲に響き渡った。 「~~っ!?」 弾き飛ばされる缶を見上げる私と、三津さん。 缶を蹴って貰えれば、見つけられて捕まえられた私は、自動的に釈放となる。 だから私達の勝ちが決まったわけで。 私を…わざわざ助けになんて来る必要は、 全くない。 それなのに、 なのに… 三津さんが蹴られた缶に気を取られた一瞬の隙に、 鬼の陣地中にいる私の元へ一目散に駆け寄ってくる、 ――――春樹。 そして満面の笑顔で、 私を陣地の外へ引っぱり出してくれた。 春樹の突き抜けるように纏う風が、私の前髪を一瞬吹き上げる。 「お待たせっ、たかちゃん!」 「……っ」 力強い春樹の手に引かれながら、私は春樹の笑う横顔に目を凝らす。 どうやら春樹は、全く関係ない反対方向にわざと視線を送って、 自分の方へ鬼の注意を逸らす作戦だったらしい。 鬼の注意が春樹側に少し向いている隙に、隠れて反対方向から近寄ってきてくれた高橋先輩。 なんて、コンビネーション! 勢いつけて缶が蹴り上がる、あの爽快感。 陣地の外へ出された時の、突き抜けるような解放感。 頬を撫でる風が私達を優しく包んでいた。 「春樹君~、ナイス! 鬼さん、ザマーミロねっ!!」 高橋先輩の走り際の声に、悔しそうな顔を向ける三津さん。 この時ばかりは、お腹を抱えて笑いながらも、 悔しがる三津さんが少し可愛いかも?、なんて思ってしまった。 こうして缶蹴りは、実際に蹴った高橋先輩の勝利に終わった。 まさか高橋先輩が勝つとは思わなかったけれど。 ーーでも。 それ以上の想定外な事が、すぐ直後。 私の身に降りかかる。 「ーーーーえ、先輩?今、なんて?」 身体ごと崩れそうな程、あり得ない事を言い出した高橋先輩へマジマジと視線を向ける。 「だから、春樹君と高嶺がキスしてって言ったのよ?」 「「ーーーえ?」」 春樹と声を合わせて瞬きを繰り返しながら、固まる身体。 ハハッちょっ、冗談は止してくださいね?先輩?笑) もうそんな、おちゃらけ必要ありませんよ? ねえ、先輩? だからそんな真顔で、……私達を見つめないで。。
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