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溜息をつきながら、静まり返った辺りを私も見回した。
誰も、私の所からは見えない。
高橋先輩も春樹もこの広い森の中で上手く隠れているらしい。
……頑張って。
心の中でドキドキと胸を高めて助けを待つ。
けれどつい、高橋先輩が真剣に走ったり、缶を蹴ったりする姿を想像して、
クスリと笑ってしまった。
まさか、大人になってから缶蹴りするなんて、
全速力で走って遊ぶなんて思わなかったな。
そんな事を思いながら三津さんの探している周辺へ目を向ける。
そのとき、春樹が余所見をしながら遠くの木の陰に佇む後ろ姿がチラリっと私の視界に入ってきた。
ーーーーは?
ど、どうして余所見なんてしてんのよ、
馬鹿じゃないの!?
三津さんの視界に入っちゃうってば!!・・汗
私も視線を送っていては春樹の存在がバレテしまうと思い、
慌てて明後日の方向へ視線を逸らす。
”もし捕まっても、
俺が、絶対に助け出してあげるからさ”
あんな事言った癖に、
捕まったりなんかしたら絶対ぜったい許さないんだからね。。
「春樹が捕まる=三津さんの勝利」という図が自ずと想像出来るわけで。
「三津さんの勝利=私との……XX」という図が…ありえるわけで、
ああ……想像するのも、悍ましい。。
だから…
居ても経ってもいられずに、心の中で叫んでみた。
”春樹~~~逃げてぇ~!!”って。
そして小さく……頑張って、って。
そうしたらね。
まるで私の心の声に気付いたかのように、ハッとした表情をこっちに向けてきて、春樹の傍に向かいつつあった三津さんから、距離を保ちつつ静かに走り出し始めた。
一歩一歩、鬼は缶から遠ざかる。
それを知ってか知らずか、鬼の目を掻い潜るかのように息を潜めて
一歩一歩、缶に近づいてくる春樹。
───でも。
だっ、駄目駄目駄目っ、そんなんじゃ見つかっちゃう!!
やっぱり春樹は、近くに三津さんが居るって事に気付いてなくて。
それとは反対に、三津さんはまだ春樹の名前を呼んでないにしても、視界に春樹を捕えたって顔で口角を上げて春樹の走りだしている方向へゆっくりと視線を向けている。
~バッ、バカバカバカッ……春樹っ
もう、
……駄目だっ…。。
そう思ってギュッと目を瞑って
顔を背けた…、
――――次の瞬間!
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