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朝の上野駅は、おもに関東北部からの乗り換え客でごった返す。櫛状の行き止まり構造となっている地平ホームに吐き出されたわたしは、一目散に中央改札方面へ抜ける。そこから半2階に位置する連絡通路へ上がり、人混みを縫うように走った。左右の側頭部に結い付けた髪を揺らし、先へ先へと急いだ。
身長150センチ弱、体重30キロ台の超小型軽量体は、体力的には不利でも身軽さという面では有利に働く。
駆け上がった3、4番線には都心へ向かう電車がひっきりなしにやってくる。発車ベルの鳴り響く電車の乗降口はどこも一杯だ。
それでもわたしは、すでにすし詰め状態となっている車内にか細く小さいだけが取り柄の体を突っ込む。直後、ドアの閉まるサイン音が鳴り響く。が、はみ出たわたしの体が邪魔になりドアはなかなか閉まらない。
ホームの係員がすぐさま駆け寄ってきて、「次の電車をお待ちください」と言う。
むろんいまのわたしにそんな選択肢はない。
「すみません」と哀願するように声をかけ、つま先立ちの状態でさらに奥のほうへと体をねじ込む。すると係員がもう1人駆けつけてきて、2人がかりで閉まらないドアを力ずくで閉めた。その際、スカートの裾こそ挟まったものの、こうしてやっと電車は動きだした。
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