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わたしもこっちに住みたい──。これまで何度となく出かかったセリフを、わたしは呑み込んだ。こうして東京に通えるだけで御の字なのだし、またこっちに住みたいというのは正確な本音ではない。本当は彼と一緒に地元の高校に進学したかったのだ。
でもやはり、都会の学校は居心地がいい。なぜなら生徒数が圧倒的に多く、こうして男の子と並んで歩いていても誰も気に留めないからだ。
もちろんそれは、高校生にステップアップしたことの表れでもあるだろう。恋愛くらい、誰だってする。中学時代はそんな当たり前のことが通用しなかったのだ。わたしたちはしばしばからかいの対象になった。
低身長カップル。それが当時、おもに男子のあいだで定着していたわたしたちの蔑称である。河田くんの身長は、現在160センチ程度。年齢的にまだ伸びしろはあると思うが、男子の中では小柄だ。それでもわたしとの差は10センチを超え、立ち話をするときなどわたしは彼の顔をやや見上げる立場にある。
外に出ると、5月前にしては強い陽射しが照りつける。気温は20℃を上まわり、けさの予報で言っていたとおりの初夏の陽気だ。
河田くんはすでにブレザーを着ておらず、さらにワイシャツの両袖は半分近く捲られ、色白だが運動部の所属らしいたくましい腕が露わになっている。
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