§0 獅子の子

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顔が半分ほど隠れるサンゴーグルを装着していた。彼はゴーグルを外し、不敵に笑うと鋭くサファイアを睨みつける。その両目は様々な色が入り交ざり、見る角度で様々な色に見えた。 次の瞬間、サファイアは壁まで吹っ飛び、岩盤に激突する。その決着はあまりにも一瞬で、他の兄弟は誰一人動いていない。岩盤に凭れたまま、再び意識を失ったサファイアを担ぎ上げるとオパールは笑う。 「テメェも、獅子の子なら、儀式ぐらいしっかり受けな」 オパールはサファイアを抱えてゲートまで運ぶと、まるで荷物でも投げ捨てる様に自らの弟をその中へ放り込んだ。近くに居たダイヤモンドやアメジストが驚いて小さな声を上げたが、オパールは意に介さず、次いで自身もその中に飛び込んだ。 「じゃ、お先に」 短い言葉を最後に、二つの影がゲートの先に消えた。 「うふふ、王座は私のものよ。誰にも渡さないわ」 エメラルドが次いで飛び込んだ。アメジストとダイヤモンドは、二人で手を握りゲートに飛び込んだ。少しでも、姉として弟として、時間を共有して居たかった。しかしゲートの中で、彼らは互いの姿がそれぞれ別の時空間に転送される事を知る。互いの名を呼ぶが、声は遠く届かなくなった。必死に手を伸ばすが、互いの姿は霞んでいく。ゲートの中で、二つの影が消えた。 (みんな、馬鹿だよなぁ) ボサボサの夕日色の長髪を掻きながら、大剣を抱えた少年は欠伸をした。 他の兄弟は、玉座だ、試練だ、騒々しいったらありゃあしない。僕は、王も試練も興味ないね。崖を上手に飛び降りて、自由に生きていこう。そうして三男ガーネットは、身体を大きく伸ばした。ふと、後ろからの視線に気付く。 長男サードニクスが此方を見ていた。静かにガーネットが旅立つのを待っている。 「はいはい、行きますよ~」 ガーネットはヒョイとゲートに飛び込んで姿を消した。ゲートはもうすぐ閉じる。徐々に入り口が狭まっていた。長男であるサードニクスは全てを見届けると、台座の上のライニアに向き直った。ライニアは何事かと眉間にしわを寄せる。彼は静かに、ライニアに向かってお辞儀をする。
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