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5章 披露
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マギア学園の男子学生寮のとある一室に、扉をノックする音が響く。唐突に聞こえてきたその音に、少年は手に持っていた紙を裏返して机に置いた。返事を待たず、扉が開かれる。
「なあレイン、昼メシ何がいい?」
「ヨグの作るものなら何でも」
料理が得意なヨグの問いへ、金髪金目の少年――レインは、薄く笑んで答える。それが一番困る、なんて言いながらも、献立を考えながら部屋を出ていこうとするヨグを呼び止める。
「そうだ、ヨグ、今夜は遅くなるから、ご飯はいらない」
「なんでまた?」
「貴族お得意のパーティに呼ばれて」
「お前も貴族だろ、しかも五大貴族」
レインの皮肉染みた口調に、ヨグは呆れ顔でツッコむ。
「勇者のお披露目とか、どうでもいい」
「イマサラだなァ。ユウトが召喚されたのって今月の初めだろ?」
「ああ、ヨグは会ったことがあるんだっけ。多分、聖剣を持ち帰ってきたから、今更やるんでしょ」
「ふうん、そういうもんか」
生返事をするヨグは、きっと何を作るかに考えをシフトしているのだろう。昼メシ出来たら呼ぶ、と言い残して部屋を出て行った。
扉が閉まったことを確認して、レインは机に向き直る。参考書が並ぶ棚の隣には、小さなフォトスタンドがひとつ、置いてあった。
金色の髪をした幼子がふたり、満面の笑みで写っている。手を繋ぎ、顔を寄せ、とても仲がよさそうだ。まるで鏡像のようにそっくりなふたりは、おそらく双子なのだろう。
「やっと会えるよ」
レインの指先が、そっと写真を撫でる。正確には、片方の幼子を。
そのまま指先は滑り、先ほど手にしていた紙を掴む。表面には、クラスと名前、補足らしき短文が、3人分、走り書きされていた。そのうちのひとつを指でなぞる。
[Sクラス ルイン・リスヴェート
本名:ルインハルト・“雷の(ニヴェル)”・アルティト
↑探し人は彼でしょう?]
丸みを帯びた字を読んで、レインは穏やかな笑顔を浮かべた。幸せそうに――楽しそうに。
「入学おめでとう、ルイン」
祝いの言葉は誰にも聞かれずに、空中に溶けた。
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