4章 聖剣

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 右腕に浮かぶ奇妙な模様――葵は紋様と呼べとか言いくさりやがった――は、エルミリオどころか専門家すらも読解できずに終わっている。人族の魔法陣とは違うもの、要するに魔族の魔法なのだそうだ。現在は研究者の先鋭たちが解析中。こちらも目と同じく侵食の心配があるため、普段は包帯で封印されている。  右目と右腕の呪いを封印していて、なおかつ不治の病の証である痣がある。なんとも葵好みの厨設定だ。これが漫画やアニメなら、痛いと笑えたのだけれど。 「ところでセンセー、退院っていつできるんすか?」 「ええ、退院したいの?」  右腕に包帯を巻き直しながら、エルミリオが心底残念そうに言う。患者はそばに置いときたいのか、それとも貴重な標本を手放したくないのか。……両方あり得るってのがなあ。 「折角ファンタジー世界に来たってのに、街中まだ見てないんデスよ。怪我はもう治ってんだ、寝てるのも飽きたっす」 「そうだなあ。退院自体はすぐにできるんだよね。定期的に通院してもらうけど」 「イドに関しては大丈夫なんですか? 普通は隔離されるらしいじゃないですか」  退院ってことは普通に生活するってことだ。ルインから聞いた話だと、イドの罹患者は専門の施設に隔離されるらしい。以前街中で暴れたノースとその従者もそこに転移させていた。 「今のところは大丈夫。経過をみて、危ないようなら施設に回ってもらうことになるね」  そんなに退院したいの、と落ち込んだ様子でエルミリオが問いかける。葵が頷いたのを見て、肩を落とした。 「わかった、手続きしておくよ。明後日には退院できるから。あーあ、初めてみる症状だから手元に置いておきたかったのに……」  おい後者だったのかよ。思わず半眼になるも、エルミリオは意に介した様子もない。テンションがだだ下がりで部屋を出ていった。 「すげぇ人だな」  いそいそとTシャツを着ながら葵が呟く。まあ確かにすごい人だ、色々と。医者としての腕前がいい代わりに、性格を犠牲にしている。というか、今まで会ってきたすごい人たちって、どれも性格が残念なような。ルインは天然ボケだし、ヴェクティスはあんなだし、グランはロリコンだし。
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