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腹ごなしには激し過ぎる運動も終わったことだし、下層にでも遊びに行こうか、と俺と葵が意気投合するのを、グランの稽古をサボるなと引き留めようとするルイン。
そんな話をしながらギルドの廊下を歩いていると、ヴェクティスが立ちふさがった。俺たちの会話を聞いていたのだろうか、眉間のシワが3割増だ。
「よ、ようヴェクティス、ちゃんと稽古は受けるから説教はカンベンしてください」
「なに、アンタまたサボる気だったのかい?」
あ、シワが1割増えた。
「ドライアドの巣にでも放り込んでやろうか。以前は随分と気に入られたようだしねえ」
「やめてください今度こそ死んでしまいます」
ドライアドは木に棲む女の姿をした魔物だ。人間の男を誘惑し、自分が棲む木へと案内しては、種を植え付けて苗床にしてしまう。そうやって殖えていく魔物。
どうやらこの顔はドライアドにも有効らしく、いたく気に入られてしまった。俺自身は魔力を持っていないから、襲われないはずだったんだけど。モテる男は辛い、なんて冗談をかます余裕もなく、泣きながら死に物狂いで逃げた。ああ、泣きましたがなにか。完全にトラウマになってるよ。
その手があったか、ってルインさんそんなこと学ばないでください。
「漫才しに来たわけじゃないんだよ。ユウトとルインに話がある」
「俺は聞かない方がいーのか?」
「構わない、さして重要でもない」
ならなんでわざわざこんなところに。この先は闘技場だ、俺たちを呼びに足を運んだのだろう。でなければここを通らない。
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