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「……別に、さっきの子と帰ってもいーのによ」
睨まれて気分を害した様子の葵が、ぶすっと不貞腐れたように言った。俺が女の子に迫られるのはいつものことだから、状況を察したのだろう。
「やーだよ、新作ゲームの発売日だってのに」
「学年一の美女よりゲームを優先するお前は爆ぜればいい」
「ははっ。予定をないがしろにする女は美女だろうが嫌い」
「うわっ、さすがイケメン様は余裕ですね。爆発しろよ」
トゲトゲしいコメントが痛い。けれど予約してないのに押しかけてくる奴と付き合ってみろよ。その苛立たしさがわかるから。
そんなこと言ったら、リア充爆発しろ、と言われるのがオチだが。
葵からはよくリア充と称されるが、俺は隠れオタだ。三次元の女なんかよりゲームが好き、あわよくば引きこもりたい二次元行きたい。
そんな俺が女の子の扱いに慣れてるのは、ひとえに傍若無人な姉の存在のせいだ。あいつは俺を奴隷かなにかだと思ってる。
閑話休題。ともかく、ゲーム発売日に女の子の相手なんかしてやれるかよ。
隠れオタなのは家族以外には葵くらいしか知らないし、葵とゲームしてたほうがよっぽど有意義。
目的のゲームを買って、帰路につく。葵の家は親がうるさいから、俺の家で。
俺の親は共働きで夜まで帰ってこない。姉は友人と駅前のケーキ屋の新作ケーキを堪能しに行くと言っていた。
だから今日は俺の家は静かなはず。
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