1章 召喚

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 途中立ち寄ったコンビニから買ったアイスを食いながら、だらだらと歩く。明日からどうするのかとか、そんな他愛ない話をして。 「おい、悠斗、アレ……」  俺の家まであと少し、といったところで、恐る恐る葵が指示した。指の先には、おどろおどろしい空気をかもし出す、幾何学模様と円が組み合わさったもの――いわゆる魔法陣が。  その黒々とした輝きは、まるでフタの空いたマンホールのよう。現にアスファルトの地面にあるわけだし。 「これはアレだな」 「うん、アレに違いない」 「「勇者召喚(笑)」」  ちまたでひそかにだか知らないが、ファンタジーケータイ小説界隈で流行っているアレ。 「いやいやまて、おかしいだろ、アレってフィクションだろ?」 「画像なら合成ワロwwwwで終わるんだがなあ。まさか視覚が乗っ取られたか?」 「ハイハイ厨二乙」  葵の厨二病はいつになったら治るんだろう。いや俺も軽度に罹っているが。 「んじゃ何だよアレ?」 「ただの落書きだろ」  それにしては輝いてるのがおかしい気もするが。きっとトリックアートだろう。小説のことが本当になるわけもないし。 「よし悠斗、アレに乗ってこいよ」 「は?」  ニヤニヤとイタズラめいた笑みに、こちらも笑顔で返す。 「いやいや、お前が行けよ。異世界の危機を救いたいんだろ」 「俺は確実に脇役だろうが」 「なら俺が主人公だとでも?」 「容姿だけを考えれば。中身は……ああ、無いな」 「だろ」  お人よしの鈍感ヒーローなんぞやってられるか。俺はきっとヒールのが似合う。  ところで、あの魔法陣。さっきより近づいている気がするのだが。 「なあ悠斗、気のせいかもしれないが、アレ近づいてないか」 「奇遇だな葵、俺も同じことを思ってたんだ」  2人で顔を見合わせた。うん、こういう時は逃げるに限る!
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