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「こんばんわ。急にごめん」
澄川部長は両手に紙袋をいくつも抱えて立っていた。
変わらず素敵な笑顔だけど、やっぱり少しやせた。
「カズを預けてからずっとほったらかしだったでしょ。エサもそろそろなくなるだろうと思って」
紙袋の中身は大量の猫缶とトイレシート。
それから工芸品のように美しい猫用おもちゃ。
「ほぉら、お前の好きなもの買ってきたぞ」
するとカズは急にわたしの腕を嫌がり部屋の一番高いところである本棚の上に上がってしまった。
「逃げるなよ。もう長いこと一緒に住んでないから俺のこと忘れちゃったかなあ」
「あの場所好きなんですよ。前の猫と同じで。カズ、降りておいで。ご主人様だよ」
両手を伸ばすとカズはしぶしぶ私の腕の中に戻った。
そのまま抱きとめて、台所へ戻ると、澄川部長は紙袋からたくさんのお土産を並べていた。
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