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「ほほう、年末にパーティですとな」
選択授業を受ける教室で俺は冬魅と、もう1人誘う予定になっている安藤静香(アンドウ シズカ)にさっき百合花と響華に言われた事を伝えた。
「30日の7時からだけど、来れるか?」
「もちろんですとも! 百合花さんの家ですか、なるほどなるほど……」
静香は頷きながらそう呟くと、キツネっぽい細目をさらに細めてにやけた。
「百合花の家に何かあるのか?」
「あぁ、そういえば一ノ瀬は行った事無いんでしたっけ? 私達は何度か遊びに行った事があるんですよ。ね~ふゆみん!」
隣で冬魅が小さく頷く。
「百合花さんの家って、凄くお金持ちなんです!」
「あ、やっぱりそうなのか?」
「行く度に高級なチョコレートとか、ケーキとかが出てくるんです! それが年越しのパーティとなれば……お寿司とか、ステーキとか……ぬふふふ……」
下品な笑いで肩まで伸びた茶髪が揺れる。どうやら俺の思っている以上に百合花の家はお金持ちらしい。お城みたいな家だったらどうしよう。っていうかどんな服着て行けば良いんだろう。
「じゃあ、2人とも30日で良いな?」
そう訊くと静香が頷いた。冬魅はすでにノートに寿司の絵を描き始めていたので答えを聞くまでも無いだろう。
期末テストが終わり冬休み目前という事もあり、授業はかなり気の抜けた雰囲気だった。夏休み前と同じだ。でもたぶんこれが普通の高校生のあり方だろう。
夏休みや冬休みがあるというのは俺達の年齢なら誰もが知っている事だ。でも、そもそも何故夏休みと冬休みが存在しているのかを知っている人というのは、案外少ないと思う。
その理由は、とても単純なものだった。俺も今日初めて知ったけど。
「暑くて勉強にならないから夏は休んで、寒くて勉強にならないから冬は休む事にしたんだ。その証拠に北海道では夏休みは本州よりも短く、逆に冬休みは長い」
響華が弁当を食べながらそう答えた。3ヶ月ほど前の体育祭の影響で、珍妙な事にこのクラスでは弁当をクラス全員で一緒に食べている。
「そんな単純な理由なんだな」
「クーラーやストーブの無い時代にとっては深刻な問題だよ。今では冷房や暖房代の問題にもなるけどね」
確かに猛暑日にクーラー無しは俺も冬魅のせいで経験させられているけど、あれは相当キツイ。扇風機も無しとなると生き残れないかもしれない。
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