1.幼なじみのいる日常

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  「静香ってそもそもどうして先生になりたいんだ?」 「う~ん、そうですねぇ……」  静香が首を傾げて唸った。 「もしかして理由無い、とか?」 「ありますよ、ありますとも! ただその、あまり人に言いたくないというか……まぁ大雑把に言うのであれば、小学生の時の担任の先生に憧れたからです」 「へぇ、どんな先生だったんだ?」 「そうですねぇ……優しい人、ですね」  優しい人、か。俺は怒られてばっかりだったからか、小学校の先生にあまり良いイメージが無い。もっとも、怒られる俺に原因があったのはよくわかってるけど。  その後静香と別れて俺と冬魅は体育館へ向かった。少し前から俺はバスケ部に所属している。ちなみに冬魅は同じタイミングでマネージャーになった。静香は手芸部なのでまだ帰ってはいないが。 「……少なっ」  体育館に入って第一声はそれだった。ただでさえまともに練習に来る人が俺を入れて8人しかいない男子バスケ部なのに、今日はその半分、4人しかいない。 「後の4人は?」 「追試だって」  部員からそんな返事が。あぁ、そういえばキャプテンの梅村もいない。あいつ赤点取ってたっけ。っつーか部員の半分が赤点で追試って大丈夫なのかこの部は。 「冬魅でさえ赤点を逃れたと言うのに……」 「うるさい」  隣で不機嫌そうな冬魅の声。こいつでさえ苦手な数学でも40点も取れたと言うのに……ちなみに赤点のラインは35点なので、結構ギリギリだった。 「つっても4人か……ったく、4人で何しろって言うんだよ」  全員いてもゲーム練習ができないと言うのに。これは来年からはテスト前に集まって勉強会でもした方が良いかもしれない。 「仕方ない。響華~」  反対側のコートを見て響華を呼んだ。女バスは人数が多く、更に悲しい事に俺達よりも強いのでよく一緒に練習している。 「……あれ? 三森さん、響華いないのか?」 「うん、何か生徒会の人に呼ばれて」 「生徒会?」  女バス部員でクラスメートの三森秋葉(ミモリ アキハ)さんに訊くとそんな返事が返ってきた。生徒会の人か……  生徒会とは俺も少なからず縁がある。縁と言っても因縁と言った方が正しいようなものだけど。  
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