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「驚いたなぁ、まさかカズがいるなんて」
「まぁ暇ですからね」
そう返すと目の前にいる人は「俺も」と軽く笑った。茶髪で長身、ギターでも担いで颯爽とライブハウスに向かっている姿が似合いそうな目の前のイケメンは、同じ高校の3年生の高橋先輩だ。俺とは小学校も中学校も同じで、お互いバスケ部だったため大分昔から付き合いがある。
ここは俺の家の近くにある郵便局だ。冬休み1日目の今日初めてバイトに来たんだが、なんと高橋先輩もいた。
「高橋先輩は去年もこのバイトしてたんですか?」
「うん。ちなみに一昨年もね。学校から近いし結構やってる人いるよ」
確かに辺りを見渡してみると学校内で見た事のある人が何人かいる。俺の住んでいる所の近くと言う事もあり、中学の同級生もいて懐かしい気分だ。
「そういえば大学受かったんですよね、おめでとうございます」
「うん、ありがと。これでやっと楽できるよ」
この間百合花から聞いた事だ。地元の大学に推薦で受かったらしい。確か礼さんが通っている大学だ。
「ところで、百合花には告白しないんですか?」
「唐突だなぁ。どうしたの?」
「どうしたのはこっちのセリフですよ。もう半年以上そんな関係じゃないですか。百合花だって結構気にしてると思いますよ?」
「そうだねぇ、もう少しかな」
そんな返事をする高橋先輩。もう少し、か。3年生は3学期半分くらいしか来ないんだし、そうやって先延ばしにしてるともう卒業なのに。
「……あ、もしかしてクリスマスとか」
「残念だけど、明後日から3日間親戚の家なの」
そういえば百合花もこの間の忘年会の話をした時はクリスマスの予定は空いてそうだったな。
「俺も色々考えてんだけどね、まだダメなの」
「どういう意味ですか?」
「好きってだけで付き合うのはダメ。もう少し気持ちが落ち着いて、それでも一緒にいたいって思えるくらいじゃないと」
真顔でそんな事を言う高校生は俺の知る限りこの人だけだ。日本中を探すぐらいじゃ見付からないかもしれない。
「……今更かもしれないんですけど、高橋先輩って百合花と結婚する気でいるんですよね?」
「うん」
あっさりと頷かれたので次の言葉が出なかった。直後に休憩時間終了を告げるチャイムが鳴り、俺達はまた仕事へと戻った。
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