2.聖夜、無茶振り、出逢い。

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   面接をした時に春川さんから聞いた事だったけど、やってみると郵便局のバイトというのは思ったよりも簡単だった。  届いた年賀状を住所別に仕分けする、というのが仕事内容なんだけど、大まかな仕分けは職員で済ませていて、俺達が手を付けるのは既に町ごとに分けられた状態のはがきの束だ。 「一ノ瀬君、お疲れ様。どう?」 「あ、お疲れ様です春川さん。大分慣れてきました」 「そっかそっか。頑張ってね。あ、このシール貼ってある所は気を付けてね」  そういえば住所の宛て名を書いたシートに青と赤のシールが貼ってある。 「青い方は間違えやすいって意味ですよね。ここなんか隣同士で同じ名字だし」 「うんうん、でも1番気を付けるのは赤い方。どうしてかわかる?」  そう言われて俺は再びシートに目を向けた。名字が隣接してる家と似ている訳じゃない。特別間違えやすい要素は無いはずだ。 「いや、ちょっとわからないです」 「クレーマーなのよ、そこ。違うハガキが届くと怒りに来るのよ」  笑顔でそんな事を言われたので、反応に困ってしまった。そんな人本当に存在するのか……。  もう1度住所のシートを確認し、作業を再開する。慣れ始めた時が1番ミスしやすいって言うし、気を付けよう。春川さんがこのタイミングで教えてくれたのはそういう意味もあるのかもしれない。  しばらく作業を続けていくと、次に渡された住所のシートに俺の家が載っていた。まだ1週間ほどあるというのにすでに父さん宛ての年賀状がある。社会人ってこういうのも色々大変なのかな……。  作業を続けていると、その中に俺宛ての年賀状を見付けてしまった。こういうのって今見て良い物なのか……。 「……あれ?」  その年賀状を見て、俺は思わず声を漏らしてしまった。この年賀状。差出人の名前が書いてない。確かに差出人の名前とかは書かなくても届くから良いと言えば良いんだろうけど……。  ……誰のなんだろ、これ。どこかで見た事のあるような字だ。字体からして女の子が書いた物のようだ。 「……まぁ良いか」  どうせ届いた時にはわかる。何故なら俺に年賀状を送ってくれるような女子って数えるほどしかいないから。俺の推測では静香だろう。あいつこういうの思い立った時にさっさと終わらせるタイプな気がするし。  そう思った俺は、さっさとその年賀状を俺の住所のスペースに置いて作業を続けた。  
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