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「ただいま~」
「おかえりなさい。どうだった?」
家に帰るとさっそく母さんがそんな事を訊いてきた。
「んん、まぁ何とかなりそう。思ってたより簡単だった」
俺はそう返事をして階段を上がる。簡単だったのは違いないけれど、午前中部活をした後に数時間立ちっぱなしだったので足が結構ツライ。
「そういえばアンタ、クリスマスって用事あるの?」
階段を上がっている途中で母さんにそんな事を訊かれた。
「……いや、特には」
そういえば今年のクリスマスはどうしよう。去年までは家で冬魅といつものように過ごして夜にケーキを食べたりしてたけど今年はそうもいかない。もっとも、それを用事があったとは言えない気もするが。
「24日はバイトがあるけど25日は暇だからずっと家にいると思う」
ありのままの残念な予定を母さんに伝え、俺は自分の部屋に入っていった。
部屋に入るなり俺はベッドに寝転んだ。部活を始めて、バイトも始めてみた今年の冬休み。それなりに充実はしそうだけど、やっぱり何かが足りない。もちろん、それが何かなんてわかっているけど。
翌日も午前中は部活、そして午後からバイトというそれなりに充実したスケジュールだった。バスケ部の他にバドミントン部やバレー部があるので1日中部活をする日は無く、大抵午前が男子部、午後が女子部といった形で部活動を行っている。
「じゃ、また明日な」
「うん」
部活を終え、冬魅と別れて家に入る。昼食をさっさと済ませ、着替えて再び家を出る。
郵便局に入ると、黙々と仕分けの作業。当たり前のことだけど年末に近くなるにつれてその量は増えていくらしい。今楽だとか簡単だとか言っていると痛い目に遭うかもしれない。
そうこうしている内にあっという間に来てしまった24日。今日はクリスマスイブだからとか言う理由で部活は休みだ。部員の中には彼女のいる人が……いなかった気がするけど、まぁ気分的な問題だろう。うちはクリスマスも部活をするような強豪でも無いし。男子は。
そんな訳で、俺は今日は朝からバイトに来ている。何気に朝から夕方までは初めてだ。いつも一緒にいる高橋先輩が親戚の家に行っていていないので、大分寂しい感じがする。
「ねぇねぇ、一ノ瀬君。ちょっとお願いがあるんだけど良いかしら」
春川さんに呼ばれたのは、そんなイブの日の昼休みだった。
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