1.幼なじみのいる日常

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   全校生徒の前で冬魅に告白されたのは、3週間前の事だ。学校祭のイベントで、俺と冬魅は体育館の舞台の上にいた。  そこで、俺は冬魅に告白されたのだ。  そして、俺は振った。その場でではなくその日の帰りに、だが。  俺と冬魅は小学5年生の時に出逢いそれからずっとこんな風に一緒にいたけれど、俺が冬魅に対して恋愛感情を持った事は1度も無かった。冬魅の気持ちを知った時自分に嘘をついて付き合おうとも思ったけど、そんな事をしても冬魅は悲しむだけだと気付いたのでやめた。  それがどうしてこんなカップルだと間違われそうな事になっているかと言うと、雨が振ったからだ。どっかの国で蝶々がテンションを上げて乱舞したせいだ。  部活を終えて体育館から外に出ると、雨が降っていた。朝は晴れていたので俺も冬魅も傘は持っておらず、仕方なく濡れて帰る事に。しかし校門を出て少し歩いた所で雨足が急に強まりやがったので俺の家に避難。ずぶ濡れになったので風呂に入る事に。  ……つまり、雨が悪い。嘘をついた天気予報が悪い。予定より30分遅く終わった部活が悪い。そして俺は悪くない。断じて悪くない。  こうして俺は数分前に冬魅が浸かっていた風呂に浸かっている訳だけど、これは不可抗力というやつだ。もう12月、この時期の雨で冷え切った体にシャワーだけはキツイ。  長湯はあまり好きではないので10分ほどで上がり、さっきも着ていた部屋着を着る。リビングからカレーの良い匂いがして食欲をそそられた。 「カレーっ、カレーっ」  リビングではさっきまで自分の部屋にこもっていた妹の三葉(ミツバ)がカレーを前にテンションを上げていた。三葉は俺の2つ下で中学2年生。学校に行く以外は基本家に引きこもってゲームをしている困った妹だ。健康的に見えるポニーテールは実はセットするのも動くのも楽だからしてるんじゃないかと最近になって思えてきた。 「冬魅お姉ちゃんは甘口と辛口どっちが好き?」 「……どっちも好き」  そんな会話を聞きながら俺もテーブル前の椅子に座る。部屋から父さんも出てきて家族全員が揃い、食事を始めた。  俺の家族は全員冬魅に対して本当の家族のような接し方をしている。こうして当たり前のように冬魅を混ぜてご飯を食べているのも珍しい光景ではなく、むしろ今年の夏休みは大半がこうだった。  
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