1.幼なじみのいる日常

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   それから仕事の内容、時給などの説明を聞いた後、ゆうちょの口座を持っていなかったのでついでに作った。自分の口座を1つも持ってなかったから良い機会だった。 「じゃあ、よろしくおねがいします」 「うん、こちらこそ」  1階まで付いて来てくれた春川さんに頭を下げ、俺は郵便局から出た。風が少しあって寒い。俺はポケットに手を入れて家まで早足で向かった。  アルバイト、か。何か不思議な気分だ。もう俺もそんな年なんだと今更ながら実感する。同い年の友達でバイトしてる人はいるのに。 「1日4000円として出るのは10日だから……」  半日しか出ない日もあるし朝から夕方まで出る日もあるから大雑把な計算だけど、大体4万円。中々の収入だ。三葉に取られないように気を付けないと。 「4万円、4万円か……」  家に着くまで4万円の使い道を考えた。けど、欲しい物があるからバイトをする訳じゃなくただ暇だからバイトをする訳だ。色々と考えたけど、これと言ったものは見付からなかった。  俺がバイトをするのはこれが人生初だけど、俺のすぐ近くには既にアルバイトをやっているヤツがいる。  そいつからちょっと話を聞こうと思ったんだけど……いつものごとく、始業のチャイムが鳴ってもまだ現れない。 「う~っす」 「恵介、遅刻だぞ」 「先生来てないから大丈夫だぜ!」  グーサインをしながらそいつが言う。篠田恵介(シノダ ケイスケ)、髪の染色が許されている陽山高校でも珍しい金髪で、入学式からこの色だったので最初は不良だと思った。今では1番仲の良いクラスメートだ。 「今日もバイトか?」 「あぁ。やー疲れた。1限は数学か、寝れるなこりゃ」 「メグ、その発言は感心しないな」  横からクラスメートの柴原響華(シバハラ キョウカ)が口を出してきた。成績優秀スポーツ万能容姿端麗、才色兼備という言葉が似合う女性だ。長く黒い髪は艶があり、目つきは男子でも圧倒されそうなほど力強い。クラス委員をしているため、周りからも頼られている。  ちなみにメグというあだ名は冬魅が恵介という文字を「めぐすけ」と誤読した事から来ている。最初は嫌がっていたけどすっかり定着してしまった。たぶん恵介ももう諦めているだろう。  
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