1.幼なじみのいる日常

9/18
前へ
/425ページ
次へ
  「じゃあ恵介はクリスマス暇なのか?」 「やー、いくら休み多いって言ってもそこを休んだら俺礼さんに殺されちまうって」  恵介が笑いながらそう返してきた。あぁ、確かにケーキ屋だもんな、1年で1番忙しい日か。  礼さんというのは恵介の向かいの家に住んでいる大学生、佐藤礼(サトウ レイ)さんだ。クラス男子による人気投票1位の百合花と2位の響華でさえ一目見ただけで敗北感を味わう程の美人。教師志望らしく、この間陽山高校に教育実習に来ていた。ちなみに柔道黒帯でドS。 「でもなんでクリスマスの予定なんか訊いたんだ?」 「毎年24日に百合花の家でクリスマスパーティをやっているんだけど、今年はみんなを誘おうって話してたんだよ」  百合花の家か……行った事も見た事も無い。けど百合花って見るからにお嬢様だし、実は結構立派な家に住んでるのかも…… 「俺は夜遅くまでバイトする訳じゃないから行けると思うけど……」 「俺は早くても8時だな~。もしかしたら次の日の準備でかなり遅くなるかも」 「ほら響華、やっぱり違う日にしようよ。そしたら響華も来れるんだし」  百合花が響華に向かってそんな事を言った。 「何だ、響華はクリスマス予定入ってるのか?」 「あぁ、その辺りは1週間ほど出掛けている。だから私の代わりにと思って提案したんだけど、どうやらみんな都合が悪そうだね。日付を変えて忘年会にしようか」 「年末なら俺はほとんど休みだぜ。代わりに一輝が死に目に遭ってるけどな」 「いや、年末でも基本的に夕方は6時までしかやらない事になってるから大丈夫だぞ」 「じゃあ30日はどうかな。夜7時から」  4人とも大丈夫との事だったのでそこで仮決定となった。仮の理由は誘う人が後2人いるからだ。 「じゃあ、ちょっと訊いてくるよ」  そう言って響華が立った瞬間に教室のドアが開き先生が入ってきた。時計を見てみると始業のチャイムから5分以上経っている。 「おう、席に着けお前ら」  担任の加藤尚彦(カトウ ナオヒコ)先生が教壇に立ってだるそうな口調で言う。いつもやる気の無さそうな先生だ。 「むぅ、タイミングが悪いな。次は選択授業だと言うのに」 「俺が訊いとくよ。同じ授業だから」  俺は響華にそう言って次の授業の準備を始める。気が付くと朝のホームルームがもう終わっていて、先生はさっさと教室から出ていってしまっていた。  
/425ページ

最初のコメントを投稿しよう!

311人が本棚に入れています
本棚に追加