第2話

16/20
49人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
<菅野 匠のつぶやき> ミラノに赴任している片岡さんが8月の休みに帰ってくる、という連絡が大谷先輩からあり、俺が幹事になって以前の職場の仲間に声をかけたら、けっこうな人数が集まることになってしまった。 何せ去年さっさと赴任してしまってから、夏も年末も全然連絡してきてくれなかったせいだ。 もう1年半くらい会ってないんだから、会いたがってる人はたくさんいる。 仕事ができて、背が高くて、イイ男で、と俺たちから見たらすべてを持っているような片岡さんが、稲葉さんに振られた、と聞いた時はすごく驚いたけど、気を使うなよと言って笑っていた姿は、やっぱりカッコ良かった。 うまく行ってるみたいだったのになー、わかんないよなーと俺たちは噂したけど、片岡さんでも振られるのか、と変な所に感心したものだ。 あれからもう3年近くが経って、稲葉さんは、去年転勤していった野上課長と結婚したらしい。その辺の事情は良くわからないけど。 待ち合わせの店に行くと片岡さんはもう着いていて、相変わらずクールにカッコ良かった。驚くことになんと女の子を連れてきていた。 稲葉に会いたいって言うから、と言われて紹介された彼女は、ミラノで知り合ったという笠原凪ちゃんという子だった。 こんにちは、お邪魔してすみません。と言って微笑んだ彼女はとても可愛らしかった。 「片岡さんの後輩の大谷です。 よろしくね、凪ちゃん」 と言って大谷先輩が彼女と握手をすると、凪ちゃんはこちらこそ、と笑った。 わ、かーわいー!と思った瞬間、凪ちゃんの手は横から引っ張られた。 「大谷、汚い手で触るな」 見上げると片岡さんが睨んでいて、ひとごとながら心底怖かった。 片岡さんは凪ちゃんの手を握ったまま、彼女の目を見つめて話し始めた。 大谷先輩も俺も全く無視だ。 「いいか、凪。ここは日本なんだから、いちいち手を握らせなくていい。それからキスもさせなくていい。わかった?」 凪ちゃんは真剣な顔で、わかりました。と頷いていた。 おいおい、手え握っただけだよ。だったらキスもしとけば良かった。と大谷先輩が呟いていて、俺はこっそり笑った。 先輩は片岡さんにいつか殺されるだろうな。 凪ちゃんはミラノに3年も住んでいる画学生で、22才という話だった。 「11才下・・・・って片岡さんそれ、犯罪ですよ」 と真面目に言うと、 「うるさい」 と低い声で言われて、やっぱり怖かった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!