第2話

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凪ちゃんはにこにこ笑って、ワインをすごく飲んでいた。途中で片岡さんがグラスを取り上げて、 「今日はもう、飲んじゃだめ」 と言うと、彼女は、 「また子供扱いして」 と言って、拗ねていた。 なんか、すごくいいなあ、と思った。見かけは全然変わってない片岡さんが、全く違う人になっている。そしてこんな素直な人に変えたのは、このふわふわした女の子なんだ、きっと。 最強なのは片岡さんだと思っていたけど、違うんだ。 最強なのは凪ちゃんなんだ、と 俺は思った。 その店はベイサイドにあって、今日は近くで花火が上がるからと、みんなで見に行くことにして店を出た。 店の前は運河になっていて、少しだけ涼しい風が吹いた。 まだ花火は始まってないけど、 向こう岸の灯りが運河に映って、ゆらゆらと揺れていた。 すごくいい雰囲気だ。 外に出た片岡さんはものすごく自然に、 「凪、おいで」 と、彼女の手を取った。 俺もイタリアとかに赴任したら、こんな風に女の子をエスコートできるのかなあ、と思って2人を見ていた。 片岡さんは凪ちゃんの腰のあたりをぐっと引き寄せて、言った。 「凪・・・・・ここは日本なんだから、俺のことも・・・・・そんな目で見ちゃだめ」 「どんな目?・・・・・航さん?」 そう言って片岡さんを見上げた凪ちゃんも、さっきとキャラが変わってて、うるうるした瞳がやたら色っぽい。 片岡さんは、少しの間凪ちゃんをじっ・・・・と見た。 それから低い声で、 「今日の凪は・・・・悪い子だね。・・・俺のこと」 と言って凪ちゃんの顎にそっと指で触れた。 俺は思わず息を止めてそれを見ていた。なんかどきどきするのは何故だろう。 片岡さんは、少し笑った。 「・・・・・・・誘うんだ」 と囁いた片岡さんは、そのまま凪ちゃんの顎を持ち上げて、キスをした。 わ・・・・映画みたいだ・・・・!と思っ俺は、思わずいち・に・さん、と数を数えていた。6まで数えたところで2人はゆっくりと離れた。 それからお互い見つめあっていた2人は、まるっきり俺たちを無視して、もう一度唇を重ねた。 なんか本当にどきどきしてきた。俺の隣で、素敵・・・・と呟いている女の子を、俺も思わず抱きしめそうになった。 こういう気分って、伝染するんだろうか?
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