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片岡さんはようやく顔を離して、でも凪ちゃんを片手で抱いたまま笑顔で、俺の方を振り返った。
「菅野、ごめんね。急用ができたから、俺たち、これで抜けるわ。また、電話する」
思わず頷いた俺に凪ちゃんは軽く頭を下げて、その小さな手をひらひらと振った。
2人は1度も離れないで、雑踏の中に消えていった。
え・・・・っと、凪ちゃんはどこで誘った・・・・のかな。
き、急用って・・・・何かな。
俺には・・・・わからないことが多すぎる。
俺もいつかイタリアに赴任できたら、わかるようになるんだろうか。
ああ、恋がしたい。と思った途端どーん、と音がして、花火が上がり始めた。
夏の夜空にたくさんの花が開いて、わあっと歓声が上がった。
ああ、いいなあ。俺も恋がしたい。
花火を見上げながら俺は、
今ものすごく人を好きになりたいなあ、と思っていた。
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