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<凪目線>
11月の声を聞くと、まるでそれが何かの合図のように一気に街は冬へと加速する。
店には、その年に収穫された葡萄で作ったワイン、NOVE LLA(ノヴェッラ)が運び込まれ、早速常連客たちが試飲を始めた。
ラーラは早めに店を閉めて、私たちにも飲むように言った。勉強しとかないとね。と笑っていた彼女はいつの間にか壁際に座っていて、片岡さんと並んで煙草を吸っていた。
マルコとまだ若いワインを味わっていると、ラーラの甥っ子のジャンニがやって来た。時々店を手伝いにくる彼は映画スターの誰かに似ている。
ジャンニはカウンターにいた私の横に座って、
『ナギ、君は今日もとても素敵だ』
と言ってから、私の手を取った。
『ジャンニ、ありがとう。あなたもね』
と、私が返すとジャンニは私をじっと見つめて、
『ねえ、君のそのクールさがとても魅力的だって、気づいてる?』
と囁いた。
ジャンニは素早く私の頬にキスをしてにっこりと笑った。
本当にこの国の男のひとは、腹が立つほど絵になる。
勝てるのはきっと、片岡さんくらいだ。
マルコがほらほらと私たちの手をひき離して、ジャンニがぶつぶつと文句を言って、またみんなで笑った。
店の中はとても暖かくて、楽しくて、そして爽やかなワインの香りに満ちていた。
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