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「………近すぎやあらしまへんか?」
「そう?」
いやいや、明らかに普通の距離じゃありませんよ。
部屋に入るなり私との距離を詰めようとする藤堂さん。
これはおそらく……。
「こんなところにいたのか、琴葉……否、雛ちゃん」
やっぱり。
どういう経緯でそれを知ったのかはわからないけれど、兎に角すでに誤魔化せないところまできていることはわかった。
「……そら、誰どすか?」
こうなったら白を切るしかない。
「知らねえのか? 自分の事なのに」
「雛なんて人、うちは知りまへん。 そないにうちと似てはるんどすか?」
私が答えると、少し考える仕草をした藤堂さんは言った。
「うーん……顔は似てると思うけど、声は似てねえな」
「……そんならただ似とるだけやないんどすか? 似とる人ん一人やニ人くらいならどっかにおると思うんやけど」
「ふうん。 ……じゃあさ」
ニヤリ笑いを一掃深めた藤堂さんは懐からあるものを取り出した。
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