第3章 探し求めて

2/8
前へ
/38ページ
次へ
「お嬢様、起きてください」 「んー、待って。 もう少しいいでしょう?」 「なりません。 桜咲(サクラ)様はもうご用意を終えております」 眠たい……。 桜咲が起きてるならいいじゃない。 私に何の用事があるのよ。 ため息をついて起き上がる。 私を起こしたその人……執事は既にこの部屋にはいない。 私はいつも放ったらかしで、桜咲だけいればいいという考えが見え見えで。 自分が生意気な人間だってわかってはいるけれど、仕方ないわよね。 私みたいな状況に生きる人間なら誰だってこうなるわ。 「私に用事があったかしら?」 まだ覚めきらない目を擦って考える。 ベットから立ち上がるとクローゼットを開けた。 私は桜咲の双子の妹だった。 両親が何の仕事をしているのかは知らないけれど、この家は裕福らしい。 そして後継者とやらになるのはもちろん姉の桜咲。 つまり私はイラナイ存在。 良く言えば桜咲の身代わりみたいな存在。 そう気がついたのは結構早い時期だった。 扱いが全然違ったから。 「お嬢様、朝食の準備ができました」 「ありがとう」 執事が朝食を持って部屋へ入る。 しかしテーブルの上にそれを置くとすぐに部屋を出た。 そう、例えばこれ。 桜咲には執事がべったりなのに私にはまるで。 とりあえず最低限の世話をして出て行く。 つまらないでしょ、こんなの。 毎日が全く同じことの繰り返し。 これからもそれが続く、とそう思っていたのだけれど。 ある日その生活に終止符が打たれた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

272人が本棚に入れています
本棚に追加