第3章 探し求めて

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だけど私はその手を取らなかった。 「あら」 「放っておけよ、そんなやつ!」 「それはできないわ、こんなに濡れて……」 自分より劣る女を哀れんでいるつもりなの? どうせ自分の優しさをアピールしたいだけでしょ。 教養があって、優しくて、愛されてて……とにかく私とは正反対。 そんな彼女が堪らなく嫌いだった。 「いい、行って」 「そう? でも……」 「いいからっ!」 私が叫んだのに驚いたのか、桜咲はすぐに私から離れて行った。 劣等感っていうのかな。 とにかく何もかもが気に入らなくて。 そうして立ち上がった私は玄関へ向かう。 いっそ家出してしまいたい、とそう思ったから。 だけどそれは男の人にぶつかったことで遮られた。 「お前か、この家の娘というのは」 「え、誰……?」 私の手を掴むその人に恐怖を覚えてガタガタと体が震え始める。 「ふっ、俺か? 俺はお前を引き取りに来た……否。 買い取った、と言った方が正しいかな?」 …………!? 買い取った……? 何それ、あり得ないでしょ……そんなのっ! 「嫌っ、離してください! お父様もお母様もそんな事をするはず……!」 「諦めろ、お前は親にさえも愛されてなんかいなかったんだよ!」 「どうしてっ? お母様は? お父様はどこっ!?」 意味がわからない……! 直接会って話をさせてよっ! 男たちは、叫ぶ私を冷たい目で見下ろす。 いくら暴れても力ではかなわなかった。 悲しくて悔しくて怖くて……いろいろな感情が混ざり合って自分でもよくわからない。
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