第3章 探し求めて

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「なんがあったんかは聞けへんのかもしれへんけど、暫らくはここにいよし。 またおいおい話してくれればええわ」 「あ、ありがとうございます……!」 てっきり断られるのかと思っていた。 私が言いたい事に気がついたのか翠子さんは続けた。 「あんさんを放っとくことなんかできひんよ。 そない不安に思わんでええよ」 「ありがとうございます……」 「うん。 それで……名前を伏せるちゅうことは太夫もできひんのやろ?」 「はい……」 私が頷くと翠子さんは頭に置いたままだった手を下ろして考え込むように顎に当てる。 「そやし、あんさんの名前を決めなあかんなぁ」 「あ、名前なら……」 「ん? なんや良案がおますん?」 最近思い出した懐かしい思い出。 そこから名前を取るのも悪くないかもしれない。 「琴羽、とか……どうですか?」 具体的な名前が出るとは思っていなかったのか、翠子さんは少しだけ目を見開くとすぐに笑った。 「せやなぁ、琴羽……か。 うん、そんならそん名前で新造になってもらうけどええ?」 「はい、よろしくお願いします」 こうして再びこの置屋にお世話になることとなった。
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