第4章 面影

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まだあなた達の元へは行けませんが、きっと すぐに私もそちらへ行くこととなると思いま す。 そのときはまたあのときのように暖かく 迎えて下さいね。 私はあなた達に会えて本当に良かった。 それでは、また会う日まで。 敬具 「これ……合ってるのでしょうか」 書き終えて手に取ったそれを見りると一人首を傾げる。 いや、確かあっているはず。 まあ読むのは一人だけですし、大丈夫ですね。 乾かしてから折りたたみ、懐へ仕舞うと立ち上がった。 階段を降りて行くと翠子さんとばったり会った。 「あ、今から行くん?」 「はい、少し時間に余裕を持った方がいいかと思いまして」 「ふふっ、少しくらい遅れても何も言わへんよ? うちかてそない鬼やないんやから」 クスクス笑うと私の手を取り何やら硬いものを握らせた。 「え、これ……」 手の中に握るあるものとは、金子だった。 それを見た途端顔を上げると翠子さんはまた笑みを深める。 「貰って行き。 いっつもようさん働いてくれとるんやし、たまには良い思いもせんと」 「………ふふ、ありがとうございます。 それでは行って来ますね」 「うん、早うお帰りやす」 そうして翠子さんに見送られ、私はある場所へと向かった。
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