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洗面所で顔を洗わせてもらい、素顔なのを気にしつつリビングに行くと、戸川君がコーヒーを淹れてくれていた。
「ありがと…」
ソファで彼の隣に座って、
コーヒーのマグを両手で包む。
今更ながら、なんだか照れて
顔をまともに見ることもできない。
初めて逢ったあの夜、
彼から貰ったのもコーヒーだった。
こうして一緒に朝のコーヒーを飲むなんて、あの時には想像もしなかった。
「……おはよ」
「なんだよ今頃。……おはよ」
文句を言いながら、ちょっと戸川君も照れたのがわかって嬉しかった。
この先もずっと一緒に、
こうしていられたらいいのに。
でも、
なぜかそれは叶わない気がした。
急に切なくなる。
手に入れてしまえば、欲が出る。
失うのが怖くなる。
恋の幸せは、
不安と背中合わせなのかもしれない。
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