初めての朝と幸せと不安と

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「やめて!見ないで、それ!」 彼の手から奪おうとする私をよけて、戸川君は声を出して読み続ける。 「へぇー。“結婚や出産を経ても女性はキャリアを積めると…”」 「それ、やらせ記事だから!」 私が言ったわけでもない、恥ずかしい文言を笑いながら読み続ける戸川君に堪らず叫ぶ。 「やめてって! それ写真映り悪いし、 恥ずかしいから!」 それを聞くと、戸川君はニヤリと笑った。 「あのな。教えといてやる」 「…何よ」 「写真映りが悪いって奴は、 間違いなく不細工らしいぞ。 例外なく、な」 「なっ…! そりゃ私は不細工だけど!」 怒って戸川君の背中を叩くと、 笑いながら私をそっと床に倒した。 被さりながら、顔を覗きこむ。 「ほら、怒ったら余計不細工だ」 「悪かったね!不細工…ん…っ」 途中で唇を塞がれた。 優しく啄むようなキスに、 私の勢いも萎んでいく。
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