初めての朝と幸せと不安と

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帰り道、戸川君のマンションまでのわずかな道のりも手を繋いでくれた。 「ね。話を蒸し返すようだけど」 照れ隠しに、喧嘩をふっかけた。 「結局、とっかえひっかえってデマじゃなくて本当じゃん。 アホかって頭叩いたくせに」 「違うって!」 ムッとした顔で戸川君が肩越しに私を睨みつけた。 「相手に執着することがなくて放ったらかしだったって意味だよ。 ヤりまくったって意味じゃない」 「や、やり…」 露骨な言葉に赤面したけれど、 戸川君は大真面目だった。 「ろくに構ってやらなかったから 長続きしなかった。 それが他の奴にはそう見えたんだろ」 「……」 「昔は気持ちが入ってなかったけど、今は違う。わかったか?」 「…はい」 何だか怒られてるみたいだけど、 ちょっと嬉しかった。 “今は違う”って言った時、 繋いでる手に力が込められたから。
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