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彼と密着していた私の体を、
冷えたエアコンの風がひやりと撫でていく。
「戸川君……?」
背中を向けて立ち上がった戸川君は、絞りだすように言った。
「……今日は、送ってくから」
まだ起き上がれないままの私は何も言えず、ただ戸川君の背中を見つめた。
「…崎田のことで、
あんなに怒った後だから」
ようやく体を起こした私は戸川君の言葉の意味を掴みかねて、黙って彼の背中を見上げた。
「まだ怒りが消えてないから」
「…ごめんなさい」
「そうじゃない。
……滅茶苦茶しそうだからだよ、
俺が」
思わず立ち上がった私は、
衝動的に彼の背中に抱きついて顔を埋めた。
「それでもいい…」
過去の私が見たら、
びっくりするだろう。
自分から請うなんて、
後から思い出せばきっと、
恥ずかしくて死にたくなるはずだ。
それでも私は自分を止められなかった。
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