嫉妬と煽情と初めての夜 #2

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「それでもいいから…」 戸川君は私の腕をそっと解いてこちらに向くと、私の顔を両手で包んで困ったように覗きこんだ。 迷いなんか私にはない。 目を閉じて、彼に体を預ける。 頭の片隅で、 崎田さんの言葉を思い出していた。 “求めた分しか返ってこなかった” 今その意味が分かった気がする。 今までの私は、 心を明け渡したことがなかったんだ。 確実な言葉や安心と引き替えに、体だけ相手に貸していただけで。 すべてを投げ出して、 心を差し出したことなんてなかったんだ。
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