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「それでもいいから…」
戸川君は私の腕をそっと解いてこちらに向くと、私の顔を両手で包んで困ったように覗きこんだ。
迷いなんか私にはない。
目を閉じて、彼に体を預ける。
頭の片隅で、
崎田さんの言葉を思い出していた。
“求めた分しか返ってこなかった”
今その意味が分かった気がする。
今までの私は、
心を明け渡したことがなかったんだ。
確実な言葉や安心と引き替えに、体だけ相手に貸していただけで。
すべてを投げ出して、
心を差し出したことなんてなかったんだ。
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