嫉妬と煽情と初めての夜 #2

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必死に堪えていた声がつい唇から零れて、 思わず手で口を覆う。 その手を戸川君がそっと外した。 固く握った私の指をほどき、 小指に薬指に一本一本、 指先に優しくキスをする。 私が大切だと伝えるように。 無茶苦茶にしそうだと言ったくせに、 苦しそうな吐息は堪えきれない彼の熱を伝えているのに、 なのにどこまでも優しいそのキスに、涙が滲んだ。 私を優しく呼ぶ彼の声に、 焦点の合わない目を必死で開き、 彼を見上げた。 力の入らない腕を彼に伸ばし、 指先で頬に触れる。 「好き……」 一度口にすると、 もう止められなかった。 「好き」 どうしようもなく好きだから、 あなたのものになりたい。 「お願い…」 乱れた息の中、 擦れた声で伝えた言葉に、 戸川君の目の奥がぐらりと揺れたのを感じた。 「紗衣…」 苦しそうに私の名を呼ぶ彼声を聞いた次の瞬間からは、もう訳が分からなくなった。 甘く漏れた声は彼の唇に塞がれ吸い取られ、私はただ彼にしがみついた。
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