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次に気が付いたのは、
まだ二人とも荒い息の収まらないまま、熱の残る体を彼が抱き締めてくれている時だった。
彼がそっと口付けてくれるのを感じながら、緩やかに眠りの底に落ちた。
“好きだ”
意識が落ちきる前、
彼の声を聞いた気がしたけれど、
夢か現つかよく分からなかった。
互いに嫉妬にかられて衝動に突き動かされた夜だった。
将来を考えられる相手との、きちんと段階を踏む恋愛にしか足を踏み入れなかった私には初めての夜だった。
綺麗な始まり方ではなかったかもしれない。
戸川君の未来が、
私と共にあるとは限らない。
でも、それでもいいと思えた。
今までの私は、
相手に所有されたことも、
そう感じたことも
願ったこともなかった。
でもこの夜は、
私が誰かに所有されたいと願い、
支配されたいと望み、
身も心もすべて預けた、
初めての夜だったと思う。
今まで私が辿ってきたものは恋愛じゃなかったとすら思える、そんな夜だった。
いつか彼を失い一人寂しさに耐える時が来ても、この夜を後悔したりしない。
そんな予感を胸に抱えながら、
彼の腕の中で深い眠りに落ちた。
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