蘭奈の店 #2

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「ああ、その記事のことね。でも、せっかく電話してきてくれて悪いんだけど、実はおれ、そんなに詳しくないんだわ」 「へ? どういうことですか?」 予想外の回答に、思わず間抜けな声を出してしまった。 「あれね、それっぽい記事を書くためにさ、ある人の本の内容をちょっと文体変えて載せただけなんだよ」 「ある人の? 本?」 「うん、まあ、どうせ、うちから出した本だし、全然売れなくてすぐに廃刊になった本だから、誰にも文句言われないと思ってね。たしか、『日常生活における呪術の役割とその歴史』って本。もう、タイトルからして売れなさそうだろ? アハハハ」 電話口から軽そうな笑い声が聞こえる。
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