最期の言葉 #2

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その日の夜、夢を見た。 ぼくは、美香さんの家の近くの、あの河川敷の土手を自転車に乗っていた。 自転車の後ろには美香さんが乗っていて、美香さんは病室で見た美香さんのようであり、鳴鈴の姿のようにも見えた。 空は雲ひとつない、抜けるような青空。土手の上の道は、地平線の彼方まで続いていた。 ぼくは美香さんを後ろに乗せ、力いっぱいペダルを漕ぐ。 後ろに乗った美香さんが、ぼくの腰に回した腕に力を込める。 力を込めたその腕が、『ありがとう』と言っている気がした。 fin
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