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『鏡界』
「う…………ここは?」
中島里見は冷たい床の感触を感じながら、意識を取り戻した。
とりあえず、ぼんやりする頭を振って意識をハッキリさせる。
「…………」
中島が周りを見回すと、一見すると何も変わりがない、女子トイレの通路内だ、だが…
「ハァ…」
息を吐くと白くなる、かなり気温が低い。
「おかしいわね、何が起きたのかしら」
女子トイレを走り抜けようとした時、一瞬だが洗面台の上の鏡に、何かが映った気がして足を止めた瞬間、意識は刈り取られてしまい、あっという間に暗転してしまった…
最後の辺りは定かではないが、中島としては、そんな風に覚えていた。
「とにかく、職員室に行かないと…谷口君、谷口君いる?」
女子トイレからそっと顔を出して、谷口を呼んでみるが、その姿は無い。
「どうしたのかしら、谷口君の性格からして、気絶した私を置き去りにするとは、ちょっと考え難いけれど…」
中島里見は少し考え込んだが、居ないものは仕方ない、とりあえず職員室に行く事にした、もしかしたら気絶した自分を運んでの移動は厳しいから、とりあえず小牧を迎えに言った…とも考えられる。
青山が居ないのを確認し、注意深く廊下を移動しながら、職員室の前に到着した中島は、そっとドアを開いて中の様子を見る。
しかし、谷口はもちろん、小牧が居る気配は無い。
「……変ね」
そう呟いた瞬間、誰かが中島の横から掴みかかってきた、体重を乗せて、こちらを組み伏せようとする気のようだ。
「くっ、離して!」
中島里見は抵抗して、相手を押し退けようと手を伸ばしたが、逆にその手を捕まれると、やや戸惑い気味にだが、手を捻られて押さえ込まれてしまう。
「痛いっ!」
「大人しくしてよ、お願いだから」
声をかけてきたのが青山で無く、女の子なのを悟って中島は捻られた腕の痛みを堪えながら、もがいていたのを止めた。
「ねえ、こんな手荒な真似をしなくても、私は話は通じるから、…手を離してくれないかしら」
「………分かったけど、静かにしてくれるって約束して、いいかな?」
「ええ、勿論よ」
「……………」
中島を組み伏せた相手が、捻った手を離して立ち上がった、それに続いて、痛む手を揉みながら、中島も立ち上がって相手を見るべく振り向いた。
「あなたは?…私は中島里見よ」
「ワタシは高橋ほのか、え~と…中島ちゃんで良いかな?」
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