第1話【鏡魔の夜】

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「失敬な、こんな美人をつかまえて、そんな侮辱を言うなんて」 「つかまえてねーよ、しかも自分で美人とか言うな」 そんなやり取りをしながらも、姉ちゃんは器用にゴミ山を降りて、手に入れた棒を俺に見せてきた。 「いいよ、そんなゴミなんか見たくもない」 「単なるゴミじゃないのよ、見てみて」 姉ちゃんは器用に棒をくるんと回すと、棒の反対側の先っぽをオレに向けた。 「うおっと、危ないな……ん?」 ちょっとのけぞったオレだが、改めて棒の先っぽに目をむけると、そこには“刃”が付けられていた。 「なんだそれ、もしかして…槍か?!」 所々が剥がれているものの、黒く塗られた木の棒の先端に、無造作に付けられた、やや細い刃…不格好な作りではあるが、槍には違いない。 「誰が作ったのか解んないけど、いい物を作ってる奴がいるもんだわ~、おし、お宝ゲット!」 ビュンビュンと棒…いや、誰かが作った槍を振り回す。 「危ねぇ!むやみやたらに振り回すな」 「大丈夫でしょ、刃はボロボロじゃない、当たっても痛いだけだから」 「十分に危ないって、危険物所持で逮捕されんぞ」 「はっはー、姉ちゃんが槍をゲットしたから羨ましいんでしょ、分かったわ、アンタの分も探してあげるから」 「いらねーよ、いいから、さっさと行くぞ」 ここに居たら、姉ちゃんのゴミ山の物色は止まりそうもないので、無視してまた森の中へと進むんで行った。 「あ、ちょっと、姉ちゃんを置いてかないでよ」 なんか可愛い声で言いながら、後ろから追いかけてきたが、手にした槍は手放す気はないらしい、そのまま握って付いてくる。 おそらく捨てろと言っても、聞き入れるとは思えないから、諦めた。 そうこうして森の中に入って30分近く、数百メートルは歩いたんじゃないかなと思った時、木々の向こうに、何やら古びた家が見えた。 「廃屋があるな」 「廃屋!?それは良さそうね、さっそく行ってみましょ」 「マジかよ」 「マジよ、ほら来なさい」 姉ちゃんはボロボロの槍を片手に、ズンズンと先に進む、なんかアマゾネスみたいだ。 森の木々を通り抜け、再び開けた場所にでると、そこには二階建ての古びた家、どことなく洋館じみた雰囲気がある、おそらく昔はきちんとした家だったのだろうが、今は見る影もない、と言うか怖いとすら思う。 「行くわよ」
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