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「失敬な、こんな美人をつかまえて、そんな侮辱を言うなんて」
「つかまえてねーよ、しかも自分で美人とか言うな」
そんなやり取りをしながらも、姉ちゃんは器用にゴミ山を降りて、手に入れた棒を俺に見せてきた。
「いいよ、そんなゴミなんか見たくもない」
「単なるゴミじゃないのよ、見てみて」
姉ちゃんは器用に棒をくるんと回すと、棒の反対側の先っぽをオレに向けた。
「うおっと、危ないな……ん?」
ちょっとのけぞったオレだが、改めて棒の先っぽに目をむけると、そこには“刃”が付けられていた。
「なんだそれ、もしかして…槍か?!」
所々が剥がれているものの、黒く塗られた木の棒の先端に、無造作に付けられた、やや細い刃…不格好な作りではあるが、槍には違いない。
「誰が作ったのか解んないけど、いい物を作ってる奴がいるもんだわ~、おし、お宝ゲット!」
ビュンビュンと棒…いや、誰かが作った槍を振り回す。
「危ねぇ!むやみやたらに振り回すな」
「大丈夫でしょ、刃はボロボロじゃない、当たっても痛いだけだから」
「十分に危ないって、危険物所持で逮捕されんぞ」
「はっはー、姉ちゃんが槍をゲットしたから羨ましいんでしょ、分かったわ、アンタの分も探してあげるから」
「いらねーよ、いいから、さっさと行くぞ」
ここに居たら、姉ちゃんのゴミ山の物色は止まりそうもないので、無視してまた森の中へと進むんで行った。
「あ、ちょっと、姉ちゃんを置いてかないでよ」
なんか可愛い声で言いながら、後ろから追いかけてきたが、手にした槍は手放す気はないらしい、そのまま握って付いてくる。
おそらく捨てろと言っても、聞き入れるとは思えないから、諦めた。
そうこうして森の中に入って30分近く、数百メートルは歩いたんじゃないかなと思った時、木々の向こうに、何やら古びた家が見えた。
「廃屋があるな」
「廃屋!?それは良さそうね、さっそく行ってみましょ」
「マジかよ」
「マジよ、ほら来なさい」
姉ちゃんはボロボロの槍を片手に、ズンズンと先に進む、なんかアマゾネスみたいだ。
森の木々を通り抜け、再び開けた場所にでると、そこには二階建ての古びた家、どことなく洋館じみた雰囲気がある、おそらく昔はきちんとした家だったのだろうが、今は見る影もない、と言うか怖いとすら思う。
「行くわよ」
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