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「へえ…」
近くでそれを見ていた高橋さんが、姉ちゃんの滑らかな動きに対してか、感心したように目を開いた。
「凄く滑らかに避けましたね、谷口のお姉さんは、何か武道の嗜みがあるんですか?」
「ふふふ、こう見えて剣道二段!」
ブイ!と高橋さんにピースする。
「なるほど、では今のは摺り足ですか、綺麗でしたよ、かなり練習されたんですか?」
「子供の頃からね、ちなみに広太にも、ちょっとばかり教えた事もあんのよ」
「へえ~!姉弟揃って剣道の心得があるんですか、嬉しいな、私もちょっとだけ空手を習ってるんですよ」
「あら、雪菜ちゃんは空手家なの?そうは見えないわね」
「あまり強くないですから、道場でも師範代にいつも負けてます」
高橋さんは『タハハ…』と笑う、師範代にはさすがにそう簡単には勝てないだろう、高橋さんが何級か知らないが。
そんな話しをしていると、学校のチャイムが鳴った。
「ヤバい、早く行かないと」
「そうですね、話し込んじゃいました」
「それ急げや急げよ!」
三人はそれぞれの言葉を口にしながら、校舎の中に駆け込んでいった。
………………………………………………
「ふぅ~」
オレは割り当てられた教室の、自分の席に座って一息ついた。
入学式も終わり、同じクラスになった生徒たちの自己紹介も済ませ、それぞれ近くの席の相手と話をしている、ここからグループ分けが既に始まっていると言えるだろう。
「よっ!どうした、もう疲れたか?」
そんな風景を眺めていると、後ろの席に座っていた男が、オレに話しかけてきた。
「いや、でもまあ、ちょっと疲れたかな、入学式の校長先生の話が長くて」
「ああ、分かるぜ、なんで校長の話ってのは、無意味に長いんだろうな、確かに疲れるのは間違いない」
ウンウンと頷いて同意してくる、名札を見ると『小牧』と書いてある。
「えーっと、名前は小牧…君か、さっきも自己紹介したがオレは谷口、よろしくな」
「おう、こっちこそ一年間よろしく頼むぜ、ちなみに小牧でいいぜ、同い年の同級生なんだし」
「分かった、小牧でいいんだな、オレも谷口と呼び捨ててくれ」
「おう、ところでだ…さっそくなんだが、俺とダチになってくれねーか、こうして席が近いのもなんかの縁って事でよ」
「ああ、もちろんだ」
俺と小牧は、笑顔でパンと手を叩き合わせた。
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