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『むむ』と高橋さんが悩むような顔をする。
「ちなみに高橋って、空手は何級なんだ?」
「級?…私は級位は超えてますよ、一応は初段で黒帯ですが」
「何ぃ!黒帯なのか高橋は?」
「はい、でもまだまだですよ、初段ですから、やっと黒帯のレベルに、一歩踏み入った所です」
なんてにこやかに言うけど、まさか空手初段とは、そりゃ黒帯としては一番下なんだろうけど、黒帯が取れるだけの技量って事は、つまり空手家として一人前の腕があると言う事になる。
「怖いな、高橋さんとは喧嘩しないように気をつけないと」
オレはブルブルと震えて見せながら言う。
「怖いとは酷いですよ、私はそんな友達との喧嘩で、殴りつけたりしませんよ」
高橋さんは『そんな~』みたいな顔で、オレに言う。
「それを言うなら、谷口さんだって剣道の心得があるんですよね、素手なら私は多分勝てないですよ」
「へえ、谷口くんは剣道やってるの?」
「いや、やってるのは姉ちゃんで、オレは姉ちゃんから教わっただけ、たまに素振りはするけど、真面目に練習してたのは一年ちょいかな」
「そうなんだ、ちなみに小牧くんは何かやってたの?」
「いや、格闘技とかは全然、スキーとか少し得意だけどな」
「スキーか、いいよな」
中学生の冬休みに友達と滑りに行ったが、あのスピード感はたまらない、今年も冬になったらみんなを誘ってスキーに行こうかな。
「わたしは運動音痴だから、スキーとか水泳はダメだったわ、全然上達しなかったの」
中島さんが頬に手を当てながら『うーん』…と唸る。
「あ、もしかして空手も基本だけって、運動が苦手だからですか?」
「そう、多分教わってもロクに腕は上がらないだろうし、でも護身術って事で、少しは覚えたいなって」
どうやら中島さんとしては、せっかく教えてもらっても、生来の運動音痴から、高橋さんに空手を教わっても使いこなせる自信がないから、基本だけ…とか言っているんじゃないのかと思った。
「大丈夫ですよ、例えあまり上達しなくても、やることに意義があるんですから」
高橋さんがビシッと構えながら言う、まあ、実際の技量を競い合う試合とかに参加するんじゃなければ、自己を磨く為なら、やる意味はあるだろう。
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